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鉄筋ガス圧接継手

ガス圧接継手の原理と特徴

接合のための基本条件

鉄(鉄筋)は原子が規則正しく格子配列した結晶構造をしています。原子の最も外側の軌道を回っている電子を価電子と呼びます。この電子は、他の原子が一定の距離まで接近すると他の原子に容易に乗り移ることができます。この2つの価電子が相互に行き来する状態を金属結合と呼び強固に結合した状態です。ガス圧接の接合も原理的には同じであり鉄筋端面にある原子同士が一定の距離に接近することにより端面の各原子の価電子をそれぞれが共有する状態になれば接合が達成されることになります。
しかしながら現実には数々の障害があって鉄筋端面全面の原子同士を近づけることは容易なことではありません。
ガス圧接においてこれを実現するためには次の3つの基本条件を満足させなければなりません。

加圧 両鉄筋端面の原子同士を移動接近させる。
加熱 変形抵抗が大きいのでこれを小さくするため、鉄筋の温度を高める。それによって原子の移動も容易になる。
圧接時間 端面全面の原子が全て接近できる時間を確保する。
接合のための施工条件

実験室などの理想的な条件のもとでは、上記の基本条件がある程度満たされれば鉄筋は接合するのですが実際のガス圧接は、作業現場で、しかも大気中で行われるため、この基本条件を満たすためには、施工上、数々の注意が必要となります。

鉄筋端面処理

鉄筋端面は通常酸化しており、この表面の酸化膜が原子同士の接近を妨げ接合を困難にしています。したがってガス圧接直前に端面の切断又は研削を行って酸化膜をすべて取り除かなければなりません。また、接合前の端面はできるだけ平滑に仕上げておくほうが端面全面を接合するのに有利であるだけでなく、大気からの酸素の浸入も防ぎやすくなります、さらに、鉄は水分があると極めて錆びやすいので、端面処理後は雨などがかからないように注意する必要があります。

加熱炎によるシールド

鉄筋端部を酸素・アセチレン炎で加熱するととき、大気中の酸素が鉄筋の突合せ部分に浸入し、端面を酸化させることがあります。そのため加熱工程においては炎が正しく鉄筋の突合せ部に当たるように注意するとともに、風が強い場合は炎が風に流されないように防風処理を施さなければなりません。また、より積極的に端面の酸化を防止するために圧接初期(端面の隙間が閉じるまで)には、アセチレン過剰炎(還元炎)を用いて加熱しなければなりません。

圧縮(アップセット)量の確保

接合端面の空洞をなくすとともに、接合面に残った介在物などを外周部へ排出するため、圧縮(アップセット)量を確保することが不可欠です。ただし、応力集中を軽減するため、ふくらみの立ち上がり部は、なだらかであることが必要です。

適切な鉄筋材料の選定

鉄(鉄筋)の中に含まれる不純物元素の中には、圧接作業にとって好ましくないものもあるので適切な材料を選ぶ必要があります。

ガス圧接部の品質と圧接条件

圧接施工条件が正しく設定され、接合のための基本条件が満たされればガス圧接部の品質性能は母材部とほば等しくなり実用上全く問題がありません。しかしながら種種の原因で、その条件が満たされなかった場合には、接合部の品質は、いうまでもなく低下してしまいます。
ガス圧接部の欠陥には、オーバーヒートや曲がり、偏心など外観で識別できる初歩的なものから、接合界面に、きわめて微細なケイ素(Si)やマンガン(Mn)の酸化物が含まれる。このような圧接部を強制的に破断するとフラット破面と呼ばれる平滑な破面が生じるものまで数多くあります。
外観上の欠陥は肉眼で見て判定することができ、施工条件を正しく修正することが比較的容易です。しかし、フラット破面を生じるような欠陥は、その発生原因が多岐にわたり、複雑であるため、原因の特定が容易ではありません。

ガス炎

鉄筋ガス圧接では、酸素とアセチレンガスを混合して得られる酸素・アセチレン炎が使用されます。ガス炎は、鉄筋端部の加熱・昇温と大気中の酸素の侵入を防ぐシールドの2つの役割を果たします。ガス圧接における適正温度は約1,200℃(鉄筋の中心の温度)といわれ一定時間内に速やかにこの温度に達するように鉄筋を加熱しなければなりません。そのため、バーナー火口数や孔径、バーナーの大きさ、ガス量などが適正に調整されなければいけません。
また、ガス炎は、圧接中に接合端面が大気中の酸素によって酸化されるのを防ぐ極めて重要なシールドの役割を果たします。このため、鉄筋ガス圧接においては、火炎の還元性を確保し、酸素の浸入を防ぐため加熱初期に数々の工夫がなされています。

圧縮(アップセット)量

鉄筋ガス圧接で刃、1.4D以上のふくらみ径を確保することが(公社)日本鉄筋継手協会の工事標準仕様書で定められており、それに伴って種々の圧縮(アップセット)法が用いられています。
最終加圧過程により、接合部の金属組織の微細化(靭性=ねばりが向上する)とフラット破面を消滅させることが可能であることが説明されています。
また、合全鋼ガス圧接部のフラット破面の有無を圧接温度(丸鋼の中心における最高到達温度)とふくらみの大きさと関係する面積拡大度で整理したもので、各圧接温度において、面積拡大度が増加すれば、丸鋼断面内では、フラット破面が発生しなくなります。
つまり、圧接温度が高くなるほど、小さな圧縮(アップセット)量でもフラット破面が消滅しやすく、逆に圧縮(アップセット)量が大きく、ふくらみも大きくなるほど、低い温度でもフラット破面は消滅します。
しかし、一般的には、大きな圧縮(アップセット)量を得るのは施工性が良くないので1.4D~1.6D程度に抑え、加熱温度を1,250℃の高温にするようにしています。
これらの結果から、圧縮(アップセット)量の増加、すなわち面積拡大度の増加は、空洞の収縮を促すばかりでなく、接合界面に存在する酸化介在物の破壊、分散および外周部への排除に寄与するものと考えられます。

時間

保持時間の増加に伴いフラット破面が少なくなる傾向になることが判明しています。
このことは、鉄筋端面の原子が十分拡Uするためには、ある程度の時間が必要であることを示しており、接合のための基本条件となります。

鉄筋端面の隙間

ガス圧接時の鉄筋間の隙間と、フラット破面率との関係は、いずれも隙間が大きくなると、フラット面率も大きくなる傾向にあります。
また、隙間とガス炎とに注目した雰囲気ガスの分析結果ですが、隙間が大きくなると、空気の巻き込み量が増え還元度が低下してしまいます。
実験結果ですが、鉄筋間の隙間が3~5mmで行われたもので、強還元炎を用いると隙間が増大してもフラット破面の発生が減少しているのが判ります。
これは、強還元炎を用いたため、隙間の大きい方が圧接面雰囲気の還元性がより高くなり酸化物の生成が困難になり、その結果フラット破面が生じにくくなったと説明することができます。
しかし、これは、あくまでも実験結果に過ぎず実際は、隙間をできるだけ小さくすることによって端面の酸化を防止しなければいけません。
ガス圧接部の曲げ破断面のフラット破面率を風の方向、風速および隙問により表したもので風が強くなるとフラット破面が増加していることが判ります。
これは風によって還元性の火炎が吹き流されシールド効果がなくなったと解釈できます。この結果からも防風措置の必要なことが判ります。

(公社)日本鉄筋継手協会資料より転記

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